王子のアパートで孤独な日々を送る二十四歳のあすか。派遣社員としての無機質な毎日に、和歌山の母への虚勢だけが積み重なっていく。そんな彼女に、正一さんから「飛鳥山を越えて、十条まで歩いてみないか」という誘いが届く。慣れ親しんだはずの王子の坂道を上りきった時、彼女の目に映ったのは、今まで気づかなかった街の広がりだった。そして十条銀座商店街で手にした一個のコロッケが、凍てついていた彼女の心を温かく溶かしていく。